生成AI活用マーケティング講座

第4日目
ゼロから組み直す

2026年3月9日(月)|講師:山口 竜一

この講座の全体像

自動車の免許を取るのと同じ。段階があります。

A

地図を持つ

仕組みと現在地

B

危険を知る

セキュリティ・リスク

C

触って覚える

実際にAIを操作

D

実務で試す

模擬クライアントワーク

E

持ち帰れる道具にする

就職活動に活かす

教科書『生成AI最速仕事術』は Cの実践ガイド として使います。

今日のタイムテーブル

1限Step A|地図を持つ ── AIの仕組み・導入の現実・求められる人材
2限Step B|危険を知る ── セキュリティ・設定実習・マスキングツール
3限Step C①|プロンプト設計 ── ひな形配布+テキスト生成の基本
4限Step C②|Gamma+Napkin AI ── スライド+図解の生成リベンジ
5限Step C③|ツール統合 ── テキスト→画像→図解→スライドの一連の流れ

1限目(60分)── Step A

地図を持つ

2つの地図で全体像と現在地を掴む

今日からスタイルを変えます

教科書は辞書(実務の参考書)として使います。

教科書に書いてあること以上の価値をちゃんと出します。
本気でやるからついてきてください。

技術の地図 ── AIの仕組み

LLM(大規模言語モデル)= 大量のテキストから「次に来そうな言葉」を予測する仕組み

理解していない

パターンを学習しているだけ。だから事実の間違い(ハルシネーション)が起きる

最新情報は知らない

学習データに含まれない情報は答えられない。検索機能は後付け

計算が苦手

「予測」が仕事なので、正確な計算は別の仕組み(Code Interpreter等)が必要

技術の地図 ── AIの世界の構造

LLM(大規模言語モデル)= 頭脳

GPT-4o(OpenAI) Claude(Anthropic) Gemini(Google) Llama(Meta)
↓ LLMの上にサービスが乗っている

一次サービス = LLMを自社で持つ企業のサービス

ChatGPT Claude.ai Gemini
↓ 一次サービスのLLMを借りてきて作られたサービス

二次サービス = 特定用途に特化

Gamma(スライド) Napkin AI(図解) イルシル(スライド) Perplexity(検索)

皆さんが触っているChatGPTは、真ん中の「一次サービス」です。

技術の地図 ── WebアプリとAPI

Webアプリ利用

ChatGPTの画面を開いて使う
完成品をそのまま使う

データは提供側のサーバーに送信される

API利用

自分のアプリからAIのエンジンを呼び出す
エンジンだけ借りる

データは同じく提供側のサーバーに送信される

よくある誤解:「APIならデータが外に出ない」→ これは間違い。どちらもエンジン本体は相手側にあります。

状況の地図 ── 日本企業のAI導入の現実

導入は進んでいる

生成AI導入済み企業:57.7%(NRI 2025)

前年44.8%から急増

でもルールがない

活用方針を策定している企業:49.7%

米国は84.8%。日本は半分がルールなしで運用

AIを導入した企業の半数近くが
「ルールなしで使っている」状態。
ここにチャンスがある。

状況の地図 ── 求められる人材像

「AIが使えます」だけでは足りない。企業が本当に欲しいのは:

💬

プロンプト力

AIに適切な指示を出せる

👁

判断力

AIの出力を見抜いて直せる

🛡

リスク管理力

何を入れてよくて何がダメか分かる

「AI使えます」+「リスク管理もできます」
= 最強の採用アピール

2限目(60分)── Step B

危険を知る

セキュリティ・法務・リスク

まず最初に決めること:データ分類

何をAIに入れてよいか。信号機で覚える。

分類扱い
🟢公開情報、一般知識制限なく使用可
🟡社内資料、匿名化済みデータ法人プラン+設定確認の上で使用
🔴顧客個人情報、NDA資料、認証情報一次ベンダー法人契約のみ、または入力禁止

「危ないサービス」より 「危ない使い方」 の方が支配的。

重要:3つの設定は全部別物

設定機能影響
学習OFFAIモデルの改善に使われない履歴は残る、メモリも使える
履歴OFF過去チャットを保存しない学習とは別概念
メモリOFFユーザー情報を記憶しない「前に話したあれ」が効かなくなる

学習OFFにしても不便にはならない。
迷ったらまずこれだけやる。

【実習】全員で設定を揃えましょう

ChatGPT

Settings → Data Controls
「Improve the model for everyone」をOFF

Claude

設定画面
学習利用をOFF

Gemini

アクティビティ設定
OFFにする
※履歴と学習が連動 — 注意

今この場で全員一緒にやりましょう。画面を開いてください。

企業向け:8つのセキュリティ対策

1法人プランの利用 ── 学習不使用がデフォルト
2データ分類の策定 ── 信号機ルールを社内で決める
3マスキング ── 送信前に個人情報・機密情報を除去
4ゲートウェイ・DLP ── 大企業向け。中小は手動マスキング+ルール
5ガイドライン整備 ── 利用可能サービスの指定、禁止データの定義
6アクセス権管理・監査ログ
7インシデント対応計画 ── 報告義務は利用事業者側にある
8契約管理 ── クライアント契約にAI利用条項を入れる

個人・フリーランスの自衛策

法人プランを使えない場合は、入れていい情報の境界を企業より厳しくする。

⚙️

オプトアウト設定

各サービスの学習利用をOFFにする(さっきやりました)

✏️

手動マスキング

個人名→「顧客A」
会社名→「X社」
金額→「●万円」

📋

NDA確認

クライアント契約でAI利用の可否を確認

二次サービスのリスク分類

分類サービス例扱い
🟢OpenAI Business、Google Workspace with Gemini顧客の非公開情報を扱う候補になり得る
🟡Napkin AI、Gamma、イルシル公開情報・匿名化済みなら可。生データは入れない
🔴無料/個人プラン全般、運営主体不明のサービス顧客の生個人情報・NDA資料は入れない

先週使ったGammaやNapkin AIは🟡(黄色)。公開情報で使うなら問題なし。

【配布】マスキングツール

AIに送る前に個人情報を自動検出・置換するツールです。

使い方

1. テキストを貼り付ける
2. 「マスキング」ボタンを押す
3. 個人情報が自動で置換される
4. そのままAIに送信

ポイント

ブラウザ上で動く = データは外に出ない
完全ではないので最終確認は目視
習慣化が最重要

3限目(60分)── Step C①

触って覚える
プロンプト設計+テキスト生成

ここから実技。教科書はこのステップの辞書です。

プロンプト = AIへの指示文

何を渡すかで、返ってくるものが変わる。

悪いプロンプト

「いい感じの提案書作って」

→ 曖昧。誰向け?何の提案?長さは?

よいプロンプト

役割・目的・条件・出力形式が明確

→ AIが「何を求められているか」分かる

教科書参照 序章「最速AIプロンプト術」(p12〜)で具体例を確認できます

【配布】プロンプトひな形

プロンプトひな形
# 役割
あなたは○○の専門家です。

# 依頼内容
○○を作成してください。

# 条件
- 対象:○○
- トーン:○○
- 文字数:○○文字程度

# 出力形式
○○の形式で出力してください。

もう1つ メタプロンプトひな形(AIにプロンプトを作ってもらうテンプレート)も配布します。

【実習】テキスト生成の基本

ひな形を使って、実際にビジネスメールの下書きを作ってみましょう。

やってみよう
# 役割
あなたはWebマーケティング会社の営業担当です。

# 依頼内容
新規クライアントへの提案アポイントメントの依頼メールを作成してください。

# 条件
- 相手:飲食店チェーンのマーケティング部長
- 提案内容:SNS運用の改善
- トーン:丁寧だが堅すぎない

# 出力形式
件名+本文のメール形式

重要:AIの出力をそのまま送らない。必ず自分の言葉で確認・修正する。

4限目(60分)── Step C②

Gamma+Napkin AI
スライド&図解の生成リベンジ

金曜の失敗を踏まえて、正しい使い方で再挑戦

Gammaの正しい使い方

金曜の失敗:「指示文」を渡していた → 正しくは「コンテンツ」を渡す

❌ 金曜のやり方

「化粧水のプロモーション企画を考えてスライドにして」

→ Gammaに考えさせてしまった

✅ 正しいやり方

ChatGPTで提案内容を先に作る → そのテキストをGammaに渡す

→ Gammaはレイアウト担当

教科書参照 第2章「最速AIパワポ術」(p44〜)

スライド作成の正しいフロー

Step 1

ChatGPTで
提案内容を作る

Step 2

テキストを
Gammaに貼る

Step 3

Gammaが
スライド化

Step 4

手動で
調整・修正

考えるのは自分+ChatGPT。レイアウトはGamma。役割分担が大事。

Napkin AI ── テキストから図解を作る

文章を貼り付ける → ワンクリックで図解・ダイアグラムが生成される

得意なこと

フロー図、比較表、プロセス図、階層図
概念の可視化に強い

注意点

🟡サービス(SOC 2 Type II取得済み)
公開情報で使うならOK
顧客の生データは入れない

【実習】さっき3限で作ったメールの内容を、Napkin AIで図解にしてみましょう。

5限目(60分)── Step C③

ツール統合

テキスト→画像→図解→スライド を一連の流れで作る

実務の流れ:ツールを組み合わせる

①テキスト

ChatGPTで
提案文を作成

②図解

Napkin AIで
概念を可視化

③画像

ChatGPT/Geminiで
イメージ画像生成

④スライド

Gammaで
全部をまとめる

それぞれのツールは「単機能」。組み合わせて初めて実務で使えるものになる。

【デモ】一連の流れを見せます

ソラシカ株式会社の案件を例に、①〜④を実際にやってみます。

ChatGPTで提案テキストを作成(ひな形使用)
Napkin AIで提案の構造を図解化
ChatGPTでイメージ画像を生成
Gammaに②③を含むテキストを渡してスライド化
手動で調整・ファクトチェック・自分の言葉に直す

明日のStep D(模擬クライアントワーク)では、この流れを自分でやってもらいます。

もう一歩先:GPTs(カスタムGPT)

「毎回同じプロンプトを書く手間」をゼロにできる機能

カスタム指示

自分の全チャットに反映
共有:不可

プロジェクト

特定の仕事用にファイルと設定をまとめる
共有:不可

GPTs

自分専用AIアシスタント
共有:チームで可能

他のサービスにも同様の機能あり → Claude:プロジェクト / Gemini:Gems

教科書参照 第5章「プロンプト仕組み化術」(p118〜)で詳しく説明されています

今日のまとめ

A

地図を持つ

AIの構造、導入の現実、求められる人材像を理解した

B

危険を知る

データ分類、設定、マスキングを実践した

C

触って覚える

プロンプト設計、Gamma、Napkin AI、ツール統合を体験した

AIを使える人はたくさんいる。
AIを見極められる人が、市場価値になる。

明日(5日目)の予告

Step C翻訳・要約・データ整理・コード生成 ── さらにできることを広げる
Step D模擬クライアントワーク ── 今日学んだスキルを組み合わせて提案書を作る

教科書の第3章・第5章をパラパラめくっておいてください。
「こんなこともできるんだ」程度でOKです。

お疲れさまでした。